糸リフトは溶ける糸で皮下の組織を引き上げる切らない美容医療です。内出血は数日〜2週間ほど、費用は本数により約8万〜50万円が目安です。つっぱり感や左右差のリスクもあり、個人差があるため医師の診察で確認しましょう。
フェイスラインのゆるみや頬の下がりが気になり始めたとき、選択肢として挙がるのが「糸リフト(スレッドリフト)」です。溶ける糸を皮下に挿入してたるんだ組織を引き上げる美容医療の施術で、メスを使わないぶん身体への負担が比較的小さいとされています。
ただ「切らないから手軽」というイメージだけで受けてしまうと、施術後のつっぱり感や皮膚の凹み、思っていたほど変化を感じられないといった後悔につながることもあります。糸リフトは外科手術ではないものの、れっきとした医療行為です。
この記事では、糸リフトの仕組みとダウンタイムの経過、起こりうるリスク、費用と持続期間の目安、そして後悔しないためのクリニックの選び方までを整理して解説します。なお、効果や経過には個人差があり、適応の判断は医師の診察が前提となります。
糸リフトとは?仕組みと期待できる変化
糸リフトは、医療用の溶ける糸を皮下組織に挿入し、その糸で組織を物理的に引き上げることでフェイスラインの印象を整えることを目的とした施術です。挿入した糸は時間の経過とともに体内で分解・吸収されていきます。
切開を伴うフェイスリフト手術と比べると腫れや内出血が落ち着くまでの期間が短い傾向にあるとされ、まとまった休みを取りにくい人にも検討されやすい施術です。一方で、引き上げられる量には限界があり、たるみの程度によっては適応とならない場合もあります。
使われる糸の種類
糸リフトに用いられる糸は、素材によっていくつかの種類に分かれます。代表的なものは次のとおりです。
- PDO(ポリジオキサノン):外科手術の縫合糸として長く使われてきた素材。比較的安価で取り扱うクリニックが多い一方、吸収されるまでの期間は短めとされています。
- PCL(ポリカプロラクトン):PDOより分解がゆるやかな素材。持続期間が長めに見込まれる傾向があります。
- PLLA(ポリ乳酸):やはり吸収がゆるやかな素材で、組織への働きかけが期待されるとして採用されることがあります。
どの糸が適しているかは、たるみの程度や皮膚の厚み、希望する変化の度合いによって変わります。「高い糸ほど良い」という単純な話ではないため、カウンセリングで理由とともに説明を受けることが大切です。
コグ(トゲ)の有無による違い
糸には、表面にコグと呼ばれる突起が付いたタイプと、突起のない平滑なタイプがあります。コグ付きの糸は突起が組織に引っかかることで引き上げる力が働きやすく、フェイスラインのもたつきが気になる場合に選ばれることが多い種類です。
一方、突起のない糸は引き上げる力は弱いものの、肌のハリ感を目的として複数本を細かく挿入する使い方をされることがあります。目的が違うため、どちらが優れているというものではありません。
引き上げ以外に期待される作用
糸を挿入した周囲では、異物に対する生体反応としてコラーゲンの生成が促されると考えられています。このため、糸そのものが吸収されたあとも一定期間は肌の質感の変化が見込まれるとする説明がなされることがあります。
ただし、この作用の程度には個人差が大きく、体質や年齢、生活習慣によっても変わります。過度な期待は禁物です。顔のたるみはエステで治る?美容医療との違いは?も併せて読むと、施術ごとのアプローチの違いが整理しやすくなります。
糸リフトのダウンタイム|経過の目安
糸リフトは「ダウンタイムが短い施術」として紹介されることが多いものの、まったく無いわけではありません。挿入する本数や糸の種類、体質によって経過は変わりますが、一般的な目安を押さえておくと予定が立てやすくなります。
施術当日〜3日目
挿入部の痛みや腫れ、内出血が出やすい時期です。口を大きく開けたときに引っ張られるような感覚が出ることもあります。痛み止めが処方される場合は指示に従って服用し、気になる症状があれば自己判断せず施術を受けたクリニックへ連絡してください。
1週間目
腫れや内出血は徐々に引いてくる時期とされます。ただし、つっぱり感や違和感はもう少し続くことが一般的です。この段階で強く顔を揉んだりマッサージしたりすると、引き上げた組織に影響が出る可能性があるため避けるよう指導されることが多くあります。
2週間〜1か月
多くの場合、この時期までに見た目上の腫れは落ち着き、糸が組織になじんでいくとされています。施術直後は引き上がりすぎて不自然に感じられても、なじむにつれて自然な印象に変化していくことがあります。
日常生活で控えたいこと
- 施術直後の激しい運動、長時間の入浴、飲酒(腫れや内出血が長引く要因になり得ます)
- 顔のマッサージ、フェイスローラー、うつ伏せ寝(医師の許可が出るまで)
- 歯科治療で大きく口を開ける処置(施術前後の時期はスケジュールを調整しておくと安心です)
- 自己判断でのエステ施術の併用
控える期間はクリニックの方針によって異なります。必ず施術先の指示を優先してください。
糸リフトで起こりうるリスク・トラブル
後悔を避けるうえで最も重要なのが、リスクを事前に知っておくことです。ここで挙げるものは必ず起きるわけではありませんが、可能性として説明されている代表的な症状です。
引きつれ・つっぱり感
糸が組織を引っ張っている以上、一定のつっぱり感は起こり得ます。多くは時間の経過とともに軽減していくとされますが、長く続く場合や日常生活に支障が出る場合は医師の診察が必要です。
皮膚の凹み・凸凹
糸の挿入位置が浅すぎた場合などに、皮膚表面にへこみや引きつれたような線が見えることがあります。皮下脂肪が少ない人ほど目立ちやすい傾向があるとされ、事前のデザインと医師の技量が結果を左右する部分です。
内出血・腫れ
針や糸が通る過程で毛細血管を傷つけると内出血が生じます。通常は数日から2週間ほどで消退していくとされますが、出やすさには個人差があります。
左右差
もともと顔には左右差があるため、施術後に非対称が気になるケースがあります。元々の骨格由来の左右差は糸リフトで解消できるものではない点も、あらかじめ理解しておきたいポイントです。顔の左右差そのものについては頬のたるみ・ブルドッグ顔を解消したい!でも触れています。
糸の露出・感染
頻度は高くないとされますが、糸の先端が皮膚から出てきたり、挿入部から細菌感染を起こしたりする可能性があります。赤み、強い痛み、熱感、膿などが見られた場合は、早急に施術先を受診してください。
効果を感じにくいケース
たるみが進行している場合や、皮膚のゆるみが大きい場合は、糸による引き上げだけでは希望する変化に届かないことがあります。この場合、別の施術が提案されることもあります。「思ったほど変わらなかった」という後悔の多くは、適応の見極めとゴール設定のすり合わせ不足から生じます。
費用と持続期間の目安
糸リフトは自由診療のため、費用はクリニックごとに大きく異なります。以下はあくまで一般的に案内されることの多い目安であり、実際の金額は必ずカウンセリングで確認してください。
本数別の費用の目安
| 挿入本数(片側) | 費用の目安 | 想定される対象 |
|---|---|---|
| 2〜4本 | 約8万〜15万円 | 部分的なもたつきが気になる段階 |
| 4〜8本 | 約15万〜30万円 | フェイスライン全体のゆるみ |
| 8本以上 | 約30万〜50万円 | 広範囲にしっかり引き上げたい場合 |
このほか、麻酔代、初診料、アフターケア費用が別途かかる場合があります。総額でいくらになるのかを、見積もりの段階で確認しておくと安心です。
持続期間の考え方
- PDO:おおむね6か月〜1年程度が目安とされます
- PCL:おおむね1年〜1年半程度が目安とされます
- PLLA:おおむね1年〜2年程度が目安とされます
いずれも糸が吸収されれば引き上げる力は失われていきます。年齢や皮膚の状態、生活習慣によって実際の持続期間は前後するため、上記はあくまで参考値です。加齢に伴う変化そのものについては老化で現れる顔の変化とは?もご覧ください。
後悔しないクリニック・医師の選び方
糸リフトは、同じ糸を使っても挿入するベクトルや深さ、本数の配分によって仕上がりが変わる施術です。だからこそ、どこで受けるかが結果を大きく左右します。
症例と使用する糸を確認する
自分と近い年齢・たるみ具合の症例が提示できるか、どの糸をなぜ選ぶのかを説明できるかは、判断材料のひとつになります。糸の名称だけでなく、選ぶ理由まで言葉にしてもらえるかを見てみてください。
カウンセリングでリスク説明があるか
メリットばかりを強調し、ダウンタイムやリスクの説明が乏しい場合は注意が必要です。起こりうるトラブルと、その際の対応方針まで説明があるかを確認しましょう。
アフターフォローの体制
施術後に不安な症状が出たとき、すぐに相談できる窓口があるかは重要です。修正や抜糸が必要になった場合の費用負担についても、事前に確認しておくとトラブルを避けやすくなります。
価格の安さだけで選ばない
極端に安価なプランは、糸の本数が少ない、使用する糸が限定される、カウンセリングが短いなどの背景があることもあります。金額の内訳と含まれる内容を照らし合わせて判断してください。
手術以外の選択肢も比較する
たるみの程度によっては、糸リフト以外のアプローチのほうが合っていることもあります。施術を一つに絞る前に、複数の選択肢を並べて比較しておくと納得感が高まります。ほうれい線を美容整形で永久に消せる?では、別の角度から選択肢を整理しています。
まとめ
糸リフトは、切開を伴わずにフェイスラインの印象を整えることを目的とした美容医療の施術です。ダウンタイムは比較的短い傾向にあるとされますが、つっぱり感や内出血、皮膚の凹み、左右差といったリスクはゼロではありません。
費用は本数によって幅があり、持続期間も糸の素材や体質によって変わります。いずれも個人差が大きいため、「何本でいくら」という情報だけで決めず、自分のたるみの状態に対して適応があるのかを医師に診てもらうことが出発点になります。
後悔を減らす一番の近道は、リスクとゴールを事前にすり合わせておくことです。気になる症状や不安がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

